詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「塗香の羽衣」

 

気高い祈り

叶わないかも

届かないかも

それでも


あなたのために

誰かのために


今 心を添えて

今 手を合わす

 

できる私も

できない私も

いるけれど


捉われの縄をほどき

塗香の香りに

包まれて


天女の羽衣を纏い

祈りの雲に乗り

心のままに思いのままに

 

 

 

【20221201】

 

「夜明けの色 朝の色」

 

夜明け

藍色の夜の濃さが

光に薄まっていく 

 

数分間で変化する

空の色

 

色を重ね変化することは

ある意味 難しくはない

 

色を薄めながら

光に近づいていく この時間は

 

計り知れない力が

空を押し上げ

朝の色を散りばめる

 

夜明け前の変化に

追いつきたい私がいる

 

藍色を払拭し

朝色に目覚めたい私が

ここにいる

 

 

 

【20221118】

 

「高嶺」

 


雲の上に 白く盛られた

富士の頂

 


水平に広げられた

薄雲を従え

 


氷河のような

厚雲に守られて

 


空とも海ともわからない

青にぽっかり浮かぶ

 


稜線が白く浮き上がり

険しさを流し

 


サラ砂をゆっくりと降らしたような

細やかな白肌

 


そこには

どう行けばよいですか?

 


どう生きれば

この山のように

美しく映るのでしょうか?

 

 

 

【20221122】

 

「十五歳 生きる意味」

 

死にたいと

生きている意味がわからないと

 

私は

烈火の如く怒る 鬼にもなれず

全てを受け入れる 仏にもなれず

 

呆然とする

ただの人でしかなかった

 

突き動かす 北風にもなれず

全てを包み込む 太陽にもなれず

 

動けないでいる

ただの人でしかなかった

 

生きていて

明日も明後日も帰ってきて

 

命を繋ぎ止める

頭の中の言葉をかき集めたけど

 

届くかどうかわからないくらい細く

つぶやくしかできないただの人

 

あなたの生きる意味を示せるわけでもなく

「私の生きる意味であって」と

 

薄っぺらい言葉を

あなたと私の間に置いた

 

 

「生きてみないと、

    その意味はわからないね」と

大人になったあなたから返ってきた言葉

 

15歳と

無力な母の

危ういあの夜を思い出し

やっと流せた涙は

 

意味などにすがらなくても

ただ 

曇る命に

息を吹きかけ 磨き続ければ

よいと

 

今 道標となる

 

 

 

【20220901】

 

「星か涙か」

 

昨夜見た

空の悲しみは

私の悲しみなのか

 

ならば

私の中にも

あの星たちのように

煌めくカケラが

あるのだろうか

 

夜が泣き 星が溢れ

私が泣き 涙が流れる

 

悲しみの空には

夜のしじまで冷たく凍り

頬の雫と

空の雫と

 

見分けがつかず

瞬く

 

 

 

【20221118】