言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ

「一年が行く」

 

桜が咲き

春が燃え

緑が踊り

風がそよぐ

 

夏は梅雨明けを告げ

陽が燦々と

熱を持ち

陽炎を揺らす

 

風が月を磨き

錦は色づきを伝え

実りは忘れずにやってきて

豊穣の大地を潤す

 

雪は積もり

寒さに肩寄せ

人の季節は一巡り

吐息交じりで一年一巡り

 

別れも悲しみも

楽しさや希望と

混ざり合い

 

いつか同じ私の中の

巡りとなり

何とも誰とも

区別なく

巡り還る

 

季節も人も時も巡り

この終わりの時が

はじまりの時で

行く年くる年

 

また巡りくる一日を

生ききる年とする

 

 

 

【20221231】

 

「聖夜の呼吸」

 

私は生きている
小さな営みだけど 生きている
 
暗い夜のしじまに凍えながら
小さく息をはいて 誰にも知られず呼吸する
 
思い描いたように
道が続いていかなくても

抱えきれない寂しさが
私を取り込んでしまっても

虚しさが
血流と一緒に私の中を巡っても

しあわせが一つ またひとつ
私の手から溢れていったとしても
 

それでも私は生きている
 
誰かの優しさや助けや
大きな自然のうねりの中で
 
手を差し伸べてくれているモノがあるとしても

誰かのお陰で生きてるんじゃない
私が生きているから
誰かの力が及ぶ
 
私が生きているから…
 

聖夜の星が
ほほを流れて消えて
夢の中に見た景色に私がいなくても
 

それでも
私は生きている
 

メリークリスマス
 

誰にも届かないこの声を
聞いているのはわたしだけ
 
静かな静かな 聖夜の呼吸で
昨日までを吹き消し

今日は
何も望まない

静かな夜

 

 

【20211226】

 

「鳴き雪の気配」

 

動かない
何も動かない
乱れない

澄み渡る天と
きめ細やかな雲の平原
雪のよう

飛行機からの景色は
半分白で半分青
どこまでも白く遠い空の大地は

枝一本も落ちておらず
獣の足跡一つ見えない
遠くに想像してみた
枯れ木の大木も
すぐにかき消される

あなたは
どこまでいくのか
この純白の平原を
一点の汚れもないこの空を

美しいが故に
不安になったかもしれない
光の中故に
振り返ることもせず真っ直ぐに
逝ってしまったのかもしれない

天に続くこの雲には
何も残していけないけれど
逝った人が
ふりかえって私の方を
見た様な気がした

笑い声や
身振り手振りや
口癖や
最後に手を振った心の中も

見えなくとも
確かな存在と生きた証を
しっかりと踏み締めた足音が
聞こえたような気がした

この雲の平原と同じくらい
静かで美しい積雪に沈む
鳴き雪の音のように
清らかに

半分白で半分青

私の視界が
泣きの涙で
しばらく曇った

 

 

 

【20221220】

「春より早く」

 

春に命を繋ぐ

冬籠りの季節に

 

二度と目覚めない

連れ合いを見送る背中

 

別れは突然で

さよならもありがとうも

 

天に立ち昇る

煙に追いつかず

 

ぽっかり空いた寂しさを

何で埋めればいいかもわからず

 

涙が雪に変わり

白く降り積もる

 

春はまだまだ遠いけど

もう 暖かい場所にきっと居ると

呟きながら

 

まがった腰を

伸ばして前をみている

 

ほんの僅かに春を望み

冬籠りの季節を忍ぶ

 

思い出話の花を咲かせる春よ

季節より先に

早く 来い

 

 

 

【20221213】

七十二侯「熊蟄穴(くまあなにこもる)」

「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」

 

冬ざれ

寒さに縮こまる

 

だけど
その寒さの中でしか
見れない景色がある

 

心が
寒々と風に吹かれても

 

その時にしか
聞こえない

心音(こころね)がある

 

寒空に立ち

凍えそうになっても

 

勇気のボタンを締め

希望の襟を立て

 

瞳の中に

輝きを閉じ込める

 

見たい景色と

聞きたい心音を

 

凍らさないために

 

 

 

【20221207】 

二十四節気「大雪」

七十二候 「閉塞成冬」

 

 

 

 

「母のコート」

 

木枯らしの足音が

聞こえる季節

いつも手に取る古いコート

父が母に残した冬の思い出


時代の匂いや

苦労が染みついた繊維

陰陽の日々が語る色の抜けた黒


それでも手触りは滑らかで

初めて手にした母の喜びは

内ポケットの中に潜んでいるみたい

 

柔らかい生地に手を通すと

父と母の思い出に包まれる


母が私に残した冬の温かさ

袖を通し

今年も

思い出を着る

 

 

 

【20191107】

 

「庭に咲く白い花」

 

太陽の光が強く届く

美しい海は友であり

風が懐かしい思い出を運ぶ

 

そんな南の島で 余生を生きるおじい

子にとってそこは帰る所で

孫にとっては訪れる場所

 

男三世代 生活の密度の差は広がり

時間の流れる速さや 愛情の方向も違い

まるでかみ合わない違う世界を生きているが

時々 風と光と海が静寂の上に同時に休むように

心が通う

 

ある年の暮

おじいのごつごつした手が

1年かけて育てた金柑の実を

孫があっという間に収穫して箱に詰め

届いたそれを 子が1日かけてジャムへと仕上げた

 

ビンに詰められたジャムは 

オレンジ色の夕陽がにじみ

家族の記憶が甘酸っぱく香る

 

それからしばらくして 子は金柑の苗を買い

受け継いだ命の表札を立てる様に 自分の庭に植えた

 

今 つなぎたい軌跡が

白い花の形で ぽつりぽつりと咲いている

南の島と同じ花を咲かせて

おじいからつながる

 

 

 

【20220723】