木の枝が
とん と揺れて
小鳥が弾んだ
もうすぐ春だと
木の枝は
感づく
私の肩に
とん と触れて
見えない誰かが合図する
そうか今か と
私は
信じて
小鳥の真似をしてみる
とん と
小さく 跳ねてみる
どん と
地面からの衝撃で
体の小さなとこまで
弾けた力が
行き渡り
細胞が
一歩前へ
はずみをつけた
季節が動く
【20220123】
意味のわからない言葉
ただ ありがとうと聞こえる
知ってる言葉を当てはめると
ただ ありがとうと流れる
何度読んでもわからない
ただ ありがとうが重なる
ーとうとうたらり たらりら
たらりあがり ららりとう(「翁」より)ー
春々ひらり はなびら
めぐりめぐりさようなら
夏々さんさ おてんとさん
たらたら汗ぽたりぽと
秋々かさり こすれ音
木枯らしほっぺひやりと
冬々凍え さむさむ
今年もあがりありがとう
ーとうとうたらり たらりら
たらりあがり ららりとうー
意味もわからないまま
新しい年に読んでみる
とうとうきたり ふくきたり
たがいにたらり ふくたらり(足らり)
ありがとう
【20220107】
私は生きている
小さな営みだけど 生きている
暗い夜のしじまに凍えながら
小さく息をはいて 誰にも知られず呼吸する
思い描いたように
道が続いていかなくても
抱えきれない寂しさが
私を取り込んでしまっても
虚しさが
血流と一緒に私の中を巡っても
しあわせが一つ またひとつ
私の手から溢れていったとしても
それでも私は生きている
誰かの優しさや助けや
大きな自然のうねりの中で
手を差し伸べてくれているモノがあるとしても
誰かのお陰で生きてるんじゃない
私が生きているから
誰かの力が及ぶ
私が生きているから…
聖夜の星が
ほほを流れて消えて
夢の中に見た景色に私がいなくても
それでも
私は生きている
メリークリスマス
誰にも届かないこの声を
聞いているのはわたしだけ
静かな静かな 聖夜の呼吸で
昨日までを吹き消し
今日は
何も望まない
静かな夜
【20211226】
動かない
何も動かない
乱れない
澄み渡る天と
きめ細やかな雲の平原
雪のよう
飛行機からの景色は
半分白で半分青
どこまでも白く遠い空の大地は
枝一本も落ちておらず
獣の足跡一つ見えない
遠くに想像してみた
枯れ木の大木も
すぐにかき消される
あなたは
どこまでいくのか
この純白の平原を
一点の汚れもないこの空を
美しいが故に
不安になったかもしれない
光の中故に
振り返ることもせず真っ直ぐに
逝ってしまったのかもしれない
天に続くこの雲には
何も残していけないけれど
逝った人が
ふりかえって私の方を
見た様な気がした
笑い声や
身振り手振りや
口癖や
最後に手を振った心の中も
見えなくとも
確かな存在と生きた証を
しっかりと踏み締めた足音が
聞こえたような気がした
この雲の平原と同じくらい
静かで美しい積雪に沈む
鳴き雪の音のように
清らかに
半分白で半分青
私の視界が
泣きの涙で
しばらく曇った
【20221220】