詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「萌え方の色」

 

桜が歌い

桜が舞い


心に淡く

次の春への希望となる


見上げていた

薄桃色が

周りの木々の緑に溶け込むころ


庭で

足元の小さな花々が

歌い出す


土の近くで

首を伸ばし

精一杯に 光を受けとり


じっと動かず

萌えて私に

希望の種を 一つ落とす

 

 


【20230403】

 

「朝の響き」

 

おはようと声かけあう

家族の調子はいつも通り

 

水道の蛇口からは

透明の水が勢いよく出て

 

ガスも電気も

パチンという音で温かい

 

バスもブォーんと

少し重そうなエンジン音

 

仕事は昨日の続き
隣の席の人は変わらない
書類のめくる音は乾いてる

 

だけど

朝…

よい響き


何も変わらなくても

自分の中では
いつも新しい幕が上がる

 

そんな風に

朝を

自分の中に膨らませる

 

シャボン玉のように

すぐに弾けてしまっても

 

七色の光が

私の中で響く瞬間を

 

忘れないでいたい

 

 

 

【20230330】

 

「春どき、桜どき」

 

桜が春に

私たちを招き入れる


待たせたねーと

春に招き入れる


春爛漫

桜爛漫

 

花びらの渦が

春の渦を起こす

 

心踊る束の間の

はる さくら

 

やがて

風を起こして

花びらをはらはらと


名残惜しそうに

見上げる私たちに

初夏の魔法をかける


散る花びらも

眩しい葉桜も

待っていること知りながら

 

今は

春どき 桜どき

歓びに招かれ 背伸びする

 

 

 

【20230328】

七十二侯 桜始開(さくらはじめてひらく)

 

 

「卒業」

 

誰にでも

涙にくれた夜がある

 

誰にでも

心の傷を数えた夜がある

 

誰にでも

闇夜に逃げ込んだ覚えがある

 

あの時

言葉にならなかった刃が

自分をえぐった

 

あの時

振り上げた拳を

奴でなく物にぶつけた

 

あの時

何が悲しくて

涙が出たのかわからない

 

人はいつも

やり過ごすしかない

 

人はいつも

知らないふりをするしかない

 

人はいつも

自分が傷つかない方を歩くしかない

 

それで

いいんよ

 

それで

少し顔を上げて

 

それで それで…

 

いつか

振り返って

 

いつか

ちょっぴり恥ずかしくなって

 

いつか

自分のあの時を

卒業する時が来るからさ

 

 

 

【20230324】

 

「小さい人」

 

私たち大人は

なんて浅はかなんだろう


小人(こども)はそれを知っていて

無理難題や謎かけを仕掛けてくる


小人(こども)はその小さな体に宇宙を持ち

私たち大人はその宇宙に戸惑う

 

どんなに優秀なロケットに

乗り込んでも

 

その空間は

遠く大人には息苦しいところ

 

小人(こども)は未来に輝くのではない

すでに輝いた光が大人の目に届くのだ

 

大人は

なんて鈍感なんだろう

 

私たちもその宇宙を

もっていたのに

 

まだ宇宙を持つ小人(こども)に触れたくて

干渉する

ただの大きな人になった

 

消えていった宇宙を映す

小人(こども)の瞳を

じっと見返すのも苦しい

 

こどもは ただ小さい人

私たち大人と同じ

時間の人

 

それを知っている大人は

こどもの時

大人の瞳に宇宙を見たはず

 

時間の人々よ

互いの宇宙を消滅させず

互いの未来を受容しよう

 

 

 

【20210201】