言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「気流に乗る」

あなたは 今 羽ばたきたい? わたしは そうでもないよ 気流に 乗っていたい そんな気分 【20211004】

「その果てに」

桜は 風に誘われて 花びらになって 土に重なり合って また 花を咲かせる 私は 波にさらわれて 島を巡り巡って 航海の水脈を消し去って やがて 私へと辿り着く 【20220408】

「距離」

穏やかな空間にいて そちらと こちらと 同じ静かな時間が 流れているだけなのに こちらは 寂しい感情がただよい 涙が溢れそうになる そちらは そちらで 違う言葉で感情を操り 一緒にいる今のこの空間が 意味のないように思えてくる 音にしたって 文字にした…

「薄衣(うすごろも)」

ちよちよ 春先の まだ 生まれたての小鳥 調子外れで 勝手気まま ほぎゃほぎゃ 家の外までひびく赤児の 鼻先にかけ 母を呼ぶ声 新しい命は いつもこの世で 一番無防備で 柔らかくも怖いもの知らず 目の前で 拳を太ももの上で握りしめて 声にならない泣き声を …

「夏の桜」

黄昏の桜の木に 燃えるような夕焼け雲の花が咲いた 夏の終わりのこと 秋には 葉の錦が歓びを咲かせ 冬には 春への希望を咲かせ 満開の花びらが 応えるように春に咲く 町を見下ろす高台の 変わらないこの場所で 時を越えて場所を越えて 記憶までも追い越して …

「琥珀色に沈めて」

夢を見る 同じような夢 何度も見る 心の揺れを言葉にできず 無言でやり過ごし 殻に閉じこもり 自分を守る言い訳ばかり揃えて 相手の傷に 想いを馳せることもできなかった 未熟だった私が 力なく立ちすくむ 夢の中でも まだ ごめんねが言えず 今日もその手を…

「星降る夕立」

ひどく降った 夕立の後に 遅れて届いた日の光が 飴色の空を広げる グラウンドの水たまりは空を映し 不思議な空間をつくる 覗き込んだら 私の曇り空も あんなに綺麗に 映してくれるかな 雨に打たれて 何もかも叩き落とされ ただ一つ残った ごめんねのつぶやき…

「逝く人 見送る人」

一秒先の命など どうなるか 誰にもわからない 明日の暮らしなど どこに向かうか 想像通りにはいかない だけど せめて 今 目の前にいる この年老いた人が 逝く人で 慌てふためき 心が逃げ惑う私が… 私が 見送る人でありたい 【20220825】

「カーブミラー越しに見た明日」

久しぶりに見上げた夕空 カーブミラー越しに映る 夕焼け雲と三日月 明日もそこに写ればいいのに… そうしたら あなたの心に触れられる そんなことできやしないし それじゃ あなたの明日が 消えて行く 気持ちを知りたいけれど あなたの明日はあなたのもの カー…

「夏の雪」

季節が巡る この庭で 空を追い 雲に流れて 思いを掴み直す 蒸し返す空の中 暑い盛りを気にもせず 涼やかに白く咲く 百日咲く夏の花 処暑を越えて 名も知らぬ雲の下で ふわりと花弁を散らし 夏の雪 いずれ 天を衝く青空に秋風渡り 花弁を舞い上げ 遠くの月 冷…

「ウソの形」

嘘のかけらを不意に飲み込むと 傷つくこともあるけれど かけらを優しさで集めると 壊れそうなこころの形が 浮かび上がる それが嘘だとわかるより ウソをついた心情に 痛みが走る 誰かを思う偽りや 誰かを安心させる秘密が 相手のことを 傷つけたくないという…

「心のひだ」

歳を重ねると 涙もろくなる 自分のものさしで 人を測るのが怖くて 感受性を鈍らせているのに 無意識に涙が出て 自分の意志では止められない いつからか 意識的につるつるにしたはずの 心のひだは 裂けて細かくなびいている 鐘が左右に揺れ 音を生むように も…

「雨の続きの物語」

空の窓が開いて 星一つ見えました 背後には 満る月 星も月も お久しぶり 【20200820】

「雲の中の富士」

そこにあろう 雄々しき山よ 季節を追いかけ衣の色を変え されど 常に雄大さを身にまとう そこにあろう 美しき山よ 四方八方の景色と調和し されど 圧倒的な美を映す そこにあろう 静の山よ なだらかな裾野はゆるりと空気を流し されど 内なる命の響きは強し …

「どちらでもよい」

欲まみれの自身と 欲がなくても生きていける自信と その間のこすれ合いが 小さくくすぶりの煙を上げる どちらも 生きている奇跡と 生かされている軌跡と ほんの少しも違わないのに 【20220818】

「荷物」

大きめのスーツケースに 二人の荷物を詰め込んで 新婚旅行に出かけたあの日 あなたの価値観に合わない私の服 私には興味のないあなたの本 それぞれの 大切にして来たものを 詰め合わせても事足りる 最低限の荷物 私たちの始まり そのうち 家族が増えるに従っ…

「真夏の影を越えて」

暑い暑いと言うけれど 暑い暑いは同じだけれど 季節は足踏みせず ゆるりゆるりと回転し 地球と同じく 次の場面へと 私たちを運んでいく 変わらず 暑い暑いと言うけれど 暑い暑いの感じ方がやや違う 季節の言の葉知りうれば 体感が機微に触れる 「涼風至(す…

「柿の木の日常」

一歩も動かない柿の木に 苔がむす 緑の模様を自由にまとわせ 木肌の割れ目の小さな蟻には 仕事場を与え 蜘蛛には 枝から枝へと間借りさせ 日陰を作った下草には 蝉の抜け殻 静かに眠らせる いろんな命に触れて いろんな命を支えて 黙って 黙って そこに立つ …