言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

『十五歳』

「夏は嫌いだ」

熱く 夏は何もかもが熱く 煌めく 暑さは誰もを煌めかせる そう見える そう見える たった一人で 息苦しくなる時は 季節なんて鬱陶しいだけで 太陽なんて 上がるか下がるか どちらかにして欲しいと 何もかも面倒になる 一人蒸された部屋の中で 夏が夏らしく じ…

「リトマス試験紙」

十五歳の気持ちが わからなくて ここに あなたをサラッと撫でれば あなたもきがつかないうちに 赤青パパッと判明できる 試験紙があれば もっと明確に 心を言い当てられるのに… 何度も首を傾げるあなたに 私が差し出せるのは 拙い言葉と 意味を持たないうなづ…

「天空をとび超えて」

並ぶ星のように ぴったりとその心に寄り添いたいけど 隣の心が 見た目よりずっとずっと遠くにある いつか届くかな…誰かの心が届くかな… 思春期の 心にロケット 飛ばせたい 【20230523】

「卒業」

誰にでも 涙にくれた夜がある 誰にでも 心の傷を数えた夜がある 誰にでも 闇夜に逃げ込んだ覚えがある あの時 言葉にならなかった刃が 自分をえぐった あの時 振り上げた拳を 奴でなく物にぶつけた あの時 何が悲しくて 涙が出たのかわからない 人はいつも …

「風景になって」

一人になりたい時もある 一人ぼっちになっちゃう事もある きれいな空が やけに心に刺さり 感傷に耽る時がある そんな思春期の心を 一人にさせたくない時がある 電柱にでも 塀にでも 梅の木にでも なって 揺らぐ心の隅っこに ちらちら映る 風景でいたい あな…

「しないとね」

休まないと 凹まないと 転げないと 挽回する力も 起き上がる力も 鍛えられないからね 今 しないとね 【20210108】

「十五歳 生きる意味」

死にたいと 生きている意味がわからないと 私は 烈火の如く怒る 鬼にもなれず 全てを受け入れる 仏にもなれず 呆然とする ただの人でしかなかった 突き動かす 北風にもなれず 全てを包み込む 太陽にもなれず 動けないでいる ただの人でしかなかった 生きてい…

「オレンジ色の栞」

光の束が 西に傾いた夕陽から届く 教室も 向かい合った顔にも 机に広げられた 教科書のページの間にも オレンジの瑞々しい粒のような 光が行き渡る 明るく照らされた友達の顔を 互いに見ながら 誰からともなく 廊下へ この空気を生む方に向き 遠くを見ると …

「十五歳の今日」

この空の向こうに何がある 遠くを見つめてみるけれど 僕の世界が狭く見えるだけ この道の先に何がある 終わりが見えない道を目指すほど 僕には勇気が足りていない 今日の次に何がある 大人たちは明日があると言うけれど 僕の今日の次はやはり今日 希望の明日…

「ただ一つできること」

悩みを背負ったまま出ていった子が 低くただいまと帰ってくる 野菜を切る手を止めて おかえりと返すと ト ト ト と 階段の鳴る音 その音で まだ心が晴れないことが すぐわかる 母だから 鍋の蓋がカタカタ 私の何もできない 無力さが鳴る 母だけど 野菜をまた…