『白い器』
木枯らしの足音が 聞こえる季節 いつも手に取る古いコート 父が母に残した冬の思い出 時代の匂いや 苦労が染みついた繊維 陰陽の日々が語る色の抜けた黒 それでも手触りは滑らかで 初めて手にした母の喜びは 内ポケットの中に潜んでいるみたい 柔らかい生地…
水鞠が 跳ねて乱れて 集まりて 錦の鏡 妹背の秋に 日々弾け 納まりてまた 動き出す 休息の午後 妹背の滝で 【20221123】
大きめのスーツケースに 二人の荷物を詰め込んで 新婚旅行に出かけたあの日 あなたの価値観に合わない私の服 私には興味のないあなたの本 それぞれの 大切にして来たものを 詰め合わせても事足りる 最低限の荷物 私たちの始まり そのうち 家族が増えるに従っ…