言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ

『白い器』

「母のコート」

木枯らしの足音が 聞こえる季節 いつも手に取る古いコート 父が母に残した冬の思い出 時代の匂いや 苦労が染みついた繊維 陰陽の日々が語る色の抜けた黒 それでも手触りは滑らかで 初めて手にした母の喜びは 内ポケットの中に潜んでいるみたい 柔らかい生地…

「妹背の滝で」

水鞠が 跳ねて乱れて 集まりて 錦の鏡 妹背の秋に 日々弾け 納まりてまた 動き出す 休息の午後 妹背の滝で 【20221123】

「荷物」

大きめのスーツケースに 二人の荷物を詰め込んで 新婚旅行に出かけたあの日 あなたの価値観に合わない私の服 私には興味のないあなたの本 それぞれの 大切にして来たものを 詰め合わせても事足りる 最低限の荷物 私たちの始まり そのうち 家族が増えるに従っ…

「愛しさは風に吹かれて」

揺れる揺れる藤レース あなたの髪に光をつけたり外したり その花房に手を触れて背中を追いかけ 後を行く 愛しさなんて口にするのも面はゆい 四半世紀ほど暮らしを醸せば空気のような夫婦の形無くなる息苦しさもありすぎる過呼吸もとうの昔に忘れ置く なのに5…