言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ

「風見鶏の憂鬱」

空は果て無く遠く 風に煽られ 足元を引きずり 行き当たりばったりのこの一歩 見上げれば 悠々と留まる屋根の上 無い物ねだりの 薄っぺらな憂鬱を 一時 風見鶏に預けて また一歩 空に近く 風を読む 広く見渡し 指し示す ただ 飛んでは行けぬ 風見鶏 気づけ旅…

「縁が和家の庭で」

どこにいても 私は私 髪をとき 仕事をし 食事を作り 空を見上げ 花を覗き 言葉を並べる 語り笑い どこにいても私は私 それは 私の真ん中が いつも この庭にあるから ここがあるから どこにいても 私は私で在る 【20221003】

「教えて、ゴーヤ先生」

先生 教えてくださいな 夏が過ぎ 秋になり ツルの巻き方や 実りの遺伝子も 全部全部伝えただろうに さらに花をつけ ツルを巻き 先へ先へと進んでいく 先に咲いた花は萎れ 先に巻いたツルは乾き それでも 更に伸びるのは 何故ですか? 【20221002】

「花鳥風月」

花を嗅ぎ 草を踏み 樹に登れ 鳥と歌い 欲望の翼を広げ 夢を啄め 風を切り 雨に涙し 水たまりにはまれ 月の満ち欠けにとらわれず 自分の足跡を星座に結び 夜を恐れず行け 赴くままに 自らが 然り 行く時 己以外の 力の大きさと 愛の深さと 希望の温かさの 傘…

「母の愛は 地球の青さ」

美しい涙を見た この南の島の 海の青に似た澄んだ涙 哀しみ憂い懐かしさ 海は人々の流した涙が とうとうと満ちたのかもしれない だからこんなに美しく 地球を包む 美しい涙を浮かべた この南の島の 空の青を湛えて澄んだ瞳 優しさ 抱擁 思い出 空は人々が映…

「窓」

家の窓から わずかに色づく庭を見る 庭に出て 色づいた木々の窓から 門を叩く色のない風を見る 寂しさや侘しさが 木々の色づきを引き立て 縁側で 季節がいそいそと 移ろい行くのを愉しむ 自然に向かう 私の窓を開け 今朝も 風を呼び込む 【20220912】

「花と禅問答」

昨日まで なかった花が 庭に咲く 驚きと なんとも言えない喜びで 声が出る 弾む自分の空気が おさまるにつれて 今度は疑問が その空気を膨らませる 昨日も 見ていたはずなのに 見落としていたのか その兆しにも 気づかなかったのか 子どもの成長も それと同…

「秋の魔法」

庭の草木 秋の魔法で 虫食い葉 レースみたいに 光の刺繍 茶色く縁取り 美しく織られて はらはら落ちて 魔法の絨毯 冬支度の ちちんぷいぷい 【20190930】

「父は空」

日曜日の夕暮れ 廊下の奥まで届くオレンジ色の光 笑い声をのせて 靴を磨きながらの親子の睦ましい時間 父と娘の日常は こんな風景ばかりじゃない 言い争いも 冷戦も 父の雷も 娘の涙も 反抗も 目まぐるしい それでも父の存在は 空のように 娘の遠景にある 朝…

「こころ座る場所」

都大路を外れた古寺 古の人の息遣い 庭の木々を 手入れの行き届いた 長い廊下に映し 輝くばかりの 緑を浸ませ 空と雲の上に 緑を載せる 衣擦れの音が 板間に佇み 細い会話が 畳に織られる 世情が違い 手に取るものは かけ離れているはずなのに 求めるものの…

「満ちる時間」

茹だるような暑さを 思い出すこともできないくらいに この金色の風に 撫でられて 朝に白露が輝く 夕に空を見上げると ちょうど中秋に 満ちる月 あと僅かな膨らみを 少しずつ空に集めて 満月になる 白露が その足りない場所に 舞い上がり あと二日重なり 空の…

「穂並に秋の風」

穂並に涼しい風が渡り 実りの秋に季節は移り 七十二候 禾乃登(こくものすなわちみのる) 人の心の機微を感じたくて 息づく自然を近くに感じたくて 言葉を一つ一つ紡ぐ 黄金の一粒一粒が豊かに頭を垂れ 収穫されるよう 言の葉がつながり 流れる一編をしたた…

「半分こ」

おせんべいを半分こ クッキーも半分こ 空の月は 誰と半分こ? 地球と空と半分こ 【20210915】

「朝の空に、夜の空に、あなたの空に」

朝の空に 五線譜引いて 雲の音符を並べてみると 小鳥の声も リズムとり 足取り軽く あなたの背中を押すから 上を向いて 鼻歌まじりで 今日を始めよう 夜の空に 五線譜引いて 星の音符を並べてみたら ちかちか光りが 優しくて 今日のあなたの 肩を撫で ちょっ…

「吾亦紅」

ここにいる 見えていますかと 背中に聞く 語りかける桔梗のように しとやかな声を出す勇気もなく 可憐に微笑む秋桜のように 距離を縮められるわけでもなく 季節にたなびくススキのように 心を揺さぶる風も吹かせない 過ぎゆく秋に わずかに赤く萌え ただ 見…

「心の消しゴム」

許してあげようよ あの怒りも 許してあげようよ あの涙も そして 許してあげようよ そうできなかった わたし自身も 【20210818】

「気流に乗る」

あなたは 今 羽ばたきたい? わたしは そうでもないよ 気流に 乗っていたい そんな気分 【20211004】

「その果てに」

桜は 風に誘われて 花びらになって 土に重なり合って また 花を咲かせる 私は 波にさらわれて 島を巡り巡って 航海の水脈を消し去って やがて 私へと辿り着く 【20220408】

「薄衣(うすごろも)」

ちよちよ 春先の まだ 生まれたての小鳥 調子外れで 勝手気まま ほぎゃほぎゃ 家の外までひびく赤児の 鼻先にかけ 母を呼ぶ声 新しい命は いつもこの世で 一番無防備で 柔らかくも怖いもの知らず 目の前で 拳を太ももの上で握りしめて 声にならない泣き声を …

「夏の桜」

黄昏の桜の木に 燃えるような夕焼け雲の花が咲いた 夏の終わりのこと 秋には 葉の錦が歓びを咲かせ 冬には 春への希望を咲かせ 満開の花びらが 応えるように春に咲く 町を見下ろす高台の 変わらないこの場所で 時を越えて場所を越えて 記憶までも追い越して …

「琥珀色に沈めて」

夢を見る 同じような夢 何度も見る 心の揺れを言葉にできず 無言でやり過ごし 殻に閉じこもり 自分を守る言い訳ばかり揃えて 相手の傷に 想いを馳せることもできなかった 未熟だった私が 力なく立ちすくむ 夢の中でも まだ ごめんねが言えず 今日もその手を…

「星降る夕立」

ひどく降った 夕立の後に 遅れて届いた日の光が 飴色の空を広げる グラウンドの水たまりは空を映し 不思議な空間をつくる 覗き込んだら 私の曇り空も あんなに綺麗に 映してくれるかな 雨に打たれて 何もかも叩き落とされ ただ一つ残った ごめんねのつぶやき…

「逝く人 見送る人」

一秒先の命など どうなるか 誰にもわからない 明日の暮らしなど どこに向かうか 想像通りにはいかない だけど せめて 今 目の前にいる この年老いた人が 逝く人で 慌てふためき 心が逃げ惑う私が… 私が 見送る人でありたい 【20220825】

「カーブミラー越しに見た明日」

久しぶりに見上げた夕空 カーブミラー越しに映る 夕焼け雲と三日月 明日もそこに写ればいいのに… そうしたら あなたの心に触れられる そんなことできやしないし それじゃ あなたの明日が 消えて行く 気持ちを知りたいけれど あなたの明日はあなたのもの カー…

「心のひだ」

歳を重ねると 涙もろくなる 自分のものさしで 人を測るのが怖くて 感受性を鈍らせているのに 無意識に涙が出て 自分の意志では止められない いつからか 意識的につるつるにしたはずの 心のひだは 裂けて細かくなびいている 鐘が左右に揺れ 音を生むように も…

「雨の続きの物語」

空の窓が開いて 星一つ見えました 背後には 満る月 星も月も お久しぶり 【20200820】

「雲の中の富士」

そこにあろう 雄々しき山よ 季節を追いかけ衣の色を変え されど 常に雄大さを身にまとう そこにあろう 美しき山よ 四方八方の景色と調和し されど 圧倒的な美を映す そこにあろう 静の山よ なだらかな裾野はゆるりと空気を流し されど 内なる命の響きは強し …

「夏の夜」

むんと熱気を残して 山に傾いていく灼熱の太陽 今日を力の限り燃やす 急げば …かもしれないし 速めれば …かもしれないし それとは一線を画し 渦巻いた線の縁(ふち)から じわりじわりと燃え進む 蚊遣り火は 空気が伝わるように じんわりと交わり 小さな面に…

「どちらでもよい」

欲まみれの自身と 欲がなくても生きていける自信と その間のこすれ合いが 小さくくすぶりの煙を上げる どちらも 生きている奇跡と 生かされている軌跡と ほんの少しも違わないのに 【20220818】

「柿の木の日常」

一歩も動かない柿の木に 苔がむす 緑の模様を自由にまとわせ 木肌の割れ目の小さな蟻には 仕事場を与え 蜘蛛には 枝から枝へと間借りさせ 日陰を作った下草には 蝉の抜け殻 静かに眠らせる いろんな命に触れて いろんな命を支えて 黙って 黙って そこに立つ …