言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ

「夏の雪」

季節が巡る この庭で 空を追い 雲に流れて 思いを掴み直す 蒸し返す空の中 暑い盛りを気にもせず 涼やかに白く咲く 百日咲く夏の花 処暑を越えて 名も知らぬ雲の下で ふわりと花弁を散らし 夏の雪 いずれ 天を衝く青空に秋風渡り 花弁を舞い上げ 遠くの月 冷…

「ウソの形」

嘘のかけらを不意に飲み込むと 傷つくこともあるけれど かけらを優しさで集めると 壊れそうなこころの形が 浮かび上がる それが嘘だとわかるより ウソをついた心情に 痛みが走る 誰かを思う偽りや 誰かを安心させる秘密が 相手のことを 傷つけたくないという…

「心のひだ」

歳を重ねると 涙もろくなる 自分のものさしで 人を測るのが怖くて 感受性を鈍らせているのに 無意識に涙が出て 自分の意志では止められない いつからか 意識的につるつるにしたはずの 心のひだは 裂けて細かくなびいている 鐘が左右に揺れ 音を生むように も…

「雨の続きの物語」

空の窓が開いて 星一つ見えました 背後には 満る月 星も月も お久しぶり 【20200820】

「雲の中の富士」

そこにあろう 雄々しき山よ 季節を追いかけ衣の色を変え されど 常に雄大さを身にまとう そこにあろう 美しき山よ 四方八方の景色と調和し されど 圧倒的な美を映す そこにあろう 静の山よ なだらかな裾野はゆるりと空気を流し されど 内なる命の響きは強し …

「夏の夜」

むんと熱気を残して 山に傾いていく灼熱の太陽 今日を力の限り燃やす 急げば …かもしれないし 速めれば …かもしれないし それとは一線を画し 渦巻いた線の縁(ふち)から じわりじわりと燃え進む 蚊遣り火は 空気が伝わるように じんわりと交わり 小さな面に…

「どちらでもよい」

欲まみれの自身と 欲がなくても生きていける自信と その間のこすれ合いが 小さくくすぶりの煙を上げる どちらも 生きている奇跡と 生かされている軌跡と ほんの少しも違わないのに 【20220818】

「荷物」

大きめのスーツケースに 二人の荷物を詰め込んで 新婚旅行に出かけたあの日 あなたの価値観に合わない私の服 私には興味のないあなたの本 それぞれの 大切にして来たものを 詰め合わせても事足りる 最低限の荷物 私たちの始まり そのうち 家族が増えるに従っ…

「光彩陸離」

青空の陽の光 木々のきらめき まぶしい季節の中に 夏ゆく あなたもゆく 高みの峰に その背中を見送る 母の眼差し 小さな子どもでもないのに 見失いそうになる 陸離たる 夏が あなたが まぶしすぎて 【20220816】

「真夏の影を越えて」

暑い暑いと言うけれど 暑い暑いは同じだけれど 季節は足踏みせず ゆるりゆるりと回転し 地球と同じく 次の場面へと 私たちを運んでいく 変わらず 暑い暑いと言うけれど 暑い暑いの感じ方がやや違う 季節の言の葉知りうれば 体感が機微に触れる 「涼風至(す…

「柿の木の日常」

一歩も動かない柿の木に 苔がむす 緑の模様を自由にまとわせ 木肌の割れ目の小さな蟻には 仕事場を与え 蜘蛛には 枝から枝へと間借りさせ 日陰を作った下草には 蝉の抜け殻 静かに眠らせる いろんな命に触れて いろんな命を支えて 黙って 黙って そこに立つ …

「愛された記憶」

愛されたことを覚えてて欲しい 眠りにつくまで 撫でたこと 抱き抱えて 背中をトントンしたこと 上瞼が もう我慢できないくらいに 重たくなって 全身の重みが こちらによりかかり その姿を見る私が どんなに幸せだったか… 小さな寝息と共に あなたに愛が沈殿…

「微動を感じて」

目の前で 呼吸している命に 何の違いがありますか? 声をかけると 瞳が動き 微動する空気の振動だけで 世界が息づいていると感じられる その存在に 何の違いがあるのでしょう 大人が 大きく動けば 大きく話せば 微動は雑音に霞んで消える 今日も 静かに 静か…

「際立ちて」

光の粒に洗われて より色鮮やかな百日紅 土の熱さに照らされて 一筋揺れる蜘蛛の糸 青天を味方に 際立ちて夏 七十二候 土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)を 迎える 【20220728】

「夕刻の憂鬱と余韻」

広々としたスーパーの駐車場 空が大きく見える場所に車を止める サイドブレーキを荒々しくかけ ハンドルに顔をうずめる うまく伝えられなかったあの言葉や 思い通りに表現できなかった想いの燃えカスが 体の疲れに覆いかぶさり 夕暮れの空気はいつもより重い…

「泣きたいのはママの方だよ」

夕方のスーパー ぐずる我が子にイライラして なだめたり すかしたり それも長くは続けられるわけもなく 堰を切ったように 言葉が出ちゃう もうママは知りません もう置いて帰ります ママーー ママーーー と泣き叫ぶ声が どんどん大きく響いて 困惑とやるせな…

「詩人の生家-見える景色と見る景色」

たいした悩みは無い 躓くことも立ち上がることも 案外平気 ただこの道の先に 心震える景色があるか 見定めたくなる 詩人 永瀬清子の生家を訪れた ひんやりとした釜屋では 薪をくめ 水をくみ 木綿の擦れる 古き生活の音を想像する 心の温度が波長を合わせて静…

追憶「手」 

あぜ道を散歩する すれ違いざま 耳の不自由なお母さんへの心無い声 聞こえるはずがないのに うつむく小さなあなたの手は 強く握られた母の手に 守られた 美容の道 五十年 ひたすら行く 手に職が宿り 人生をつくった 鏡に映る目の前の人の人生を癒し 華やぎを…

「静かな土」

清々しく 迷いもためらいもなく すっくと立つ竹の青さ 堂々と力強く残る 成長の刻印 どんな出会いも出来事も 善し悪しの眼鏡でみればモノクロ写真 目の前の景色を美しい目で見渡せば 限りなく深く燃ゆる緑のきらめき 心躍る喜びは しなやかさを味方につけ 苦…

「土用干し」

白白と明けるころ 目が覚めて 縁側の朝戸風に 梅を干す 夫と挨拶し合い また微睡む 日差しが入り 起き上がり 昨夜の残り物で 一食目を済ませ のろのろと洗濯を外に出す 日盛り ごろごろとまた夢に浸り よく寝るなと 目線の高さが同じあなた 風に吹かれて 光…

「夏のお昼ごはん」

ギラギラおてんとさんに さんさんひかりを分けてもらった ピッカピカの夏野菜を タラタラ汗のあなたが収穫 ザッブザブ洗って フライパンに放り込めば 相性のよい油が パチパチと拍手で迎えてくれる シャカシャカ混ぜた甘酢に ダイブさせたら さっぱり味がし…

「鳴かず飛ばず」

青く 青く 夏ドーム 刹那に 刹那に 蝉時雨 共鳴し 共鳴し 耳鳴りに似た 輝きの乱反射が 白く 白く めまいを誘う 命短し 煌めきの朝 私は今日も 鳴かずにいる 飛ぶのはいつだ 【20210720】

「白い器」

白と 一口に言っても 百通りを超える いろいろ想像できるはず なのに 夫婦って関係は わかっているようで 貧相な想像力でわかっちゃいない 笑いが出る ある日の会話 「白い器で統一したいね」 いいね 二つ返事で同意 「必要ないもの棚から出そうか」 いいね …

「よわむし」

自分は何ができるんだろ自分はどこへ行きたいんだろう とても長い時間迷子になっていると思ってた 自分探しで迷子になってると思ってた 一本道を歩いているのに 自分は探さなくて いいよ追いかけっこも やめにしよ 私は 自分の布石を 確認したい ただの 弱虫…

「雨の日は傘をさして」

ぽつぽつ 雨が降っています お天気も 晴れがあって 曇りがあって 雨がある 私たちの人生にだって 晴れの日もあれば 曇りの日もあって 当然 雨の日もある 晴れの日なんて、なかった、、 なんて思っても それは 当たり前すぎて 気づかなかっただけ そして 雨の…

「へその緒からのバトン」

へその緒が 切れたあの日から 私たち 親子になったんだね ゴールテープを切るように 始まったんだよ 二人三脚 腕を組んで 倒れそうになる足元を 気遣いながら 急カーブでは 歩調を合わせ 周りを行く親子に 焦ったり 笑いあったり 助けたり 助けられたり そし…

「植え替え」

土が変わり 場所が変わり 根を張る広さと 光の具合が違えば まだまだ 咲けるのかもしれない 咲かせたい 咲きたい 自分の足元から 力を吸い上げ 咲け 【20210708】

「今日の夏色」

青空に立ち上る 真っ白な雲の峰 金色の太陽を受け 熱く咲く黄色の向日葵 鮮やかに緑で 思い出した様に吹く風に 流れを合わせる稲の群れ 笑顔と同じ スイカ色 玉のように流れる汗を滑らす 小麦色に焼けた肌 絵日記に残したような 夏の色彩が 事実であったか …

「女優になる」

歳を重ねて 女優になる 空覚えの穏やかな言葉を 一つ一つ並べ 慈しみの視線を はるか遠くに向ける バラードを歌うように大きくゆっくりと 優雅な仕草でふるまう 素の私では叶わないけれど 何もかも台本通りに 他人にも自分にも吐き捨てた とがった言葉は 忘…

「言の葉の泉」

潤沢に 溢れてきやしないのに 枯渇する恐怖を感じている なんと 傲慢な私 湧き出る言の葉は 水のように循環するのに 【20220410】