そこには
なりたかった未来と憧れた誰かが
背表紙をこちらに向けて道標を示す
そこには
諦めて行かなかった先の風景が残る
手放したはずの道の上に
今の自分が立ち続けている不思議
そこには
求め続けた母親像が並ぶ
母心のものさしを探し求め
いつしか私自身の軸になる
そこには
家族の成長の足跡がある
挿絵が金平糖のように
一つ一つが楽しく甘い思い出
そこには
一度も手に取っていない興味のないものも並ぶ
自分にとって意味を見出せないものもまた
自分の一部
本棚には
人生が並ぶ
壁面の端から目を追っていくと
私の内と外を過ぎていった声と文字が流れていく
家族の本棚には
過去と今と未来が並ぶ
一冊の本が「おわり」でくくられても
その先は
まだまだ つづく
家族の物語は
まだまだ 続く
【20220616】