詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「せいちょうの花」◇中国新聞 詩壇 掲載◇

 

天から舞い降りた 光の粒
一瞬のうちに 忘れ得ぬ喜びの空気に記憶した
金木犀の香り漂う季節
小さな命の輝きは
その存在自体が一生懸命

太陽に照らされる 鏡の背中
雨降りの後の水たまりも
草花に水をやる大きなジョロも
時間を忘れて見入った
ありの行列や セミの衣替えも
好奇心にあふれたそのままの姿

美しく咲く 結晶の花
行ってきますとただいまの時間の中で
喜びを重ねて 涙で磨きをかけ
自分の表現を学んでいく
ゆっくりゆっくり 変化していく姿を
嬉しくもあり寂しくもあり見守る

雪に見送られ 桜に迎えられ
一生懸命に光を保とうとしていた小さなあなたは
「せいちょう」という
大きな光の花を一つ咲かせました
今はただ その花を見るのがうれしくて
記憶の中の金木犀の香りの中にいるようです

これからも
その花が咲くたびに
あの日の 喜びの香りに包まれます



2016年9月5日中国新聞掲載【20160616】