言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「夏を探して」

 

まぶしい陽射しに 片目をつむり

勢いを増してきた初夏の兆しを全身に浴びる

先ほどまで

緊張と不安の時間の中に居たせいか

光の恩恵を受け入れられず

力の入ったままの私

 

駐車場への道すがら 偶然みつけた日陰の小道

病棟が光を遮り

ひんやりとした空気に包まれる

その涼やかさが新鮮で

思わず腕を大きく開いてみる

 

小道に植えられた木々の緑陰が

こんもり膨れていて

名も知らない苔のじゅうたんに守られた土が

触れると 掌が吸い付くほど 冷たい

 

風が吹くと さわさわと木々が揺れ

苔の上に 光の葉を散らす

 

あの刺すような光の直線とは

同じとは思えないほど

柔らかく その揺らぎが 反対の掌を温めた

かさかさとした私の手に

少しずつ感覚が戻る

 

どこか遠くで

他人事に聞こえていた言葉が

やっと私に届いたような気がした

大丈夫ですよ…

医師の言葉をまねしてつぶやいてみる

 

両掌をみながら 

ほっとした気持ちと少しの用心とを確かめ

うす暗い小道の先へ 視線を向けた

 

今年は 

どこへ行こうか

どこに寄り道しようか

生かされている

私の

夏を探しに

 

 

【20190717】