詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「月の小舟」

 

まだ薄青い天空を 霞のような三日月がゆく

 

太陽が山肌に触れる鐘の合図で

黄金色の波が放たれ

しばらく眩しさが時を支配する

 

その光の弧が遠くで一点になると

辺りはまた静かな色が頭上に渉る

 

まだぼんやりと漕ぎ続ける小舟は

緩やかな波に運ばれる

 

やがて白い三日月は 静かに際だって黄色くなり

辺りは 群青から

たった独り 

墨色の世界に残していく

 

思い通りにならない暗闇を漂い

夜に自分を見失い

人は 時に そんな航海を行く

 

隣で

同じ夕空を見上げ

まだ幼さの残るほほえみをのせて

月の小舟が行く

 

漕ぎ出した

先を目指して

明けるだろう向こう岸を凝視して

 

薄暗さに

静かに

黄色い瞳を際立たせた

 

 

 

【20200716】