詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「夕刻の憂鬱と余韻」

 

広々としたスーパーの駐車場

空が大きく見える場所に車を止める

 

サイドブレーキを荒々しくかけ

ハンドルに顔をうずめる

うまく伝えられなかったあの言葉や

思い通りに表現できなかった想いの燃えカスが

体の疲れに覆いかぶさり

夕暮れの空気はいつもより重い

 

自分の中のくすぶりにエンジンの音がからみつき

いつもはなんてことない小さな揺れが 気に障る

力任せにエンジンを切って 私の感情も強制終了

 

ストンっと エンジンの音が消えると

不思議と私の中は静かだった

さっきまでのもやもやは

私の生きるエンジン音だったのか

深くシートに体を預け

大きくついたため息で

ゆっくり私が戻ってくる

 

目の前に広がる空は

静かに目をつむるように

山合いに吸い込まれる陽のあかりを

藍色の中に包んだ

 

空の色の変化だけが時を刻む

 

このまま動きたくない 

ゆるゆるとした時間に漂っていたい

…という欲求に負けそうになる

 

だが

目をつむった時

外で話す親子連れの声が聞こえた

 

私は 両手でハンドルを引き寄せ

その勢いを借りて身体を起こす

夕刻を回さなければ…

 

今夜のおかずは何にしよ!

 

スーパーの入り口まで

距離があるのを後悔して

少し前の自分自身に苦笑い

 

空と同じように

私の中に広がった静かな余韻は

そんな後悔など包み込み

 

家族の時間にエンジン全開で

 

ハンドルを切る

 

 

【20190620】