大きめのスーツケースに
二人の荷物を詰め込んで
新婚旅行に出かけたあの日
あなたの価値観に合わない私の服
私には興味のないあなたの本
それぞれの
大切にして来たものを
詰め合わせても事足りる
最低限の荷物
私たちの始まり
そのうち
家族が増えるに従って
必要最低限の言葉はなくなり
持たないことに不安を駆られ
荷物は大きく膨れていった
体力だけで抱えて凌いできたが
大切にしていた物を見失ったり
次々入れ替わる大量の物の煩わしさを
投げ出したくもなった
そして
子どもたちが巣立って
小さな旅に出る朝
あなたが言ったわ
この鞄
一つで行こう と…
鞄に詰める荷物は少なく
これだけ?と聞くあなたに
笑顔でうなづく私
着慣れた洋服二人分と
あなたには興味の無い私の本一冊
あとの隙間は
一緒に過ごせる喜びを持ち帰るために
空けておくわ
二人だけの旅の思い出って
軽いのかしら
重いのかしら
【20220430】