言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ

「夏の夜」

 

むんと熱気を残して

山に傾いていく灼熱の太陽

 

今日を力の限り燃やす

 

急げば    

 …かもしれないし

速めれば   

 …かもしれないし

 

 

それとは一線を画し

 

渦巻いた線の縁(ふち)から

じわりじわりと燃え進む

蚊遣り火は

 

空気が伝わるように

じんわりと交わり

 

小さな面に静かに

伝わる熱を

自分の力にして

丸い線の真中を目指す

 

急ぐことはない

 

追い立てることも

追い立てられることも

望んではいない

 

ほんとは…

望んではいないのに

 

耳元にまとわりつく

目の前に散らつく

世間の雑念を

 

鼻腔にふれる

薬草の香りにくるみ

 

立ち登る一筋の煙に

細く息を吐ききり

 

弱き焦りの虫が

宵闇に巣食う前に

退治する

 

少し熱が冷め

風が動き

 

一日がほどけるように

煙が揺れる

 

あしたにいざない

優しく

揺れる

 

 

【20210829】