詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「薄衣(うすごろも)」

 

ちよちよ

春先の まだ 生まれたての小鳥

調子外れで 勝手気まま

 


ほぎゃほぎゃ

家の外までひびく赤児の

鼻先にかけ 母を呼ぶ声

 


新しい命は

いつもこの世で 

一番無防備で

柔らかくも怖いもの知らず

 


目の前で

拳を太ももの上で握りしめて

声にならない泣き声を

あげている

あなたもそうだった

 


人の歩みと

思春期の階段は

新しい鎧を手に入れながらも

無垢な子どもでいれる薄衣を脱いでいく

 


声にならない言葉を

むやみに口にしないだけでも

あなたはまだ

逃げることができる子どもでいれる

 


大人になりかけの

新しい命

この世で一番息苦しく

もがいてる

 


気づいているよ

わかっているよ

 


だけど

投げかける視線だけが

今は

あなたへの答え

 

 

 

【20220410】