言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「涙の跡の色」

 

涙を流した人たちが

幾人も

通り過ぎて行きました

 

ひと時私の前に立ち止まり

言葉にならない感情の発露を

涙に含んで

静かに流して行った

 

今は

何もなかったかのように

私のそばを離れ

涙の跡までも霞の中に消えていく

 

それでいい

目の前が色鮮やかな景色が

色濃くなっていくごとに

涙の滲んだ下書きや

薄めの消しゴムのあとは

わからなくなるもの

 

それでいい

今朝の錦秋の景色の様に

あなたの笑顔の筆で描くならば

その色を含む

繊維の繊細さが

深い色を放つから

 

涙の跡の色彩は

静かに沈み

今のあなたの景色を

浮き立たせ

 

深みのある色が

息をし始める

 

 

 

【20221103】