詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「庭に咲く白い花」

 

太陽の光が強く届く

美しい海は友であり

風が懐かしい思い出を運ぶ

 

そんな南の島で 余生を生きるおじい

子にとってそこは帰る所で

孫にとっては訪れる場所

 

男三世代 生活の密度の差は広がり

時間の流れる速さや 愛情の方向も違い

まるでかみ合わない違う世界を生きているが

時々 風と光と海が静寂の上に同時に休むように

心が通う

 

ある年の暮

おじいのごつごつした手が

1年かけて育てた金柑の実を

孫があっという間に収穫して箱に詰め

届いたそれを 子が1日かけてジャムへと仕上げた

 

ビンに詰められたジャムは 

オレンジ色の夕陽がにじみ

家族の記憶が甘酸っぱく香る

 

それからしばらくして 子は金柑の苗を買い

受け継いだ命の表札を立てる様に 自分の庭に植えた

 

今 つなぎたい軌跡が

白い花の形で ぽつりぽつりと咲いている

南の島と同じ花を咲かせて

おじいからつながる

 

 

 

【20220723】