太陽の光が強く届く
美しい海は友であり
風が懐かしい思い出を運ぶ
そんな南の島で 余生を生きるおじい
子にとってそこは帰る所で
孫にとっては訪れる場所
男三世代 生活の密度の差は広がり
時間の流れる速さや 愛情の方向も違い
まるでかみ合わない違う世界を生きているが
時々 風と光と海が静寂の上に同時に休むように
心が通う
ある年の暮
おじいのごつごつした手が
1年かけて育てた金柑の実を
孫があっという間に収穫して箱に詰め
届いたそれを 子が1日かけてジャムへと仕上げた
ビンに詰められたジャムは
オレンジ色の夕陽がにじみ
家族の記憶が甘酸っぱく香る
それからしばらくして 子は金柑の苗を買い
受け継いだ命の表札を立てる様に 自分の庭に植えた
今 つなぎたい軌跡が
白い花の形で ぽつりぽつりと咲いている
南の島と同じ花を咲かせて
おじいからつながる
【20220723】