言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「母のコート」

 

木枯らしの足音が

聞こえる季節

いつも手に取る古いコート

父が母に残した冬の思い出


時代の匂いや

苦労が染みついた繊維

陰陽の日々が語る色の抜けた黒


それでも手触りは滑らかで

初めて手にした母の喜びは

内ポケットの中に潜んでいるみたい

 

柔らかい生地に手を通すと

父と母の思い出に包まれる


母が私に残した冬の温かさ

袖を通し

今年も

思い出を着る

 

 

 

【20191107】