詩集「言の葉の舟」

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「世界の晩餐」

 

ハンバーグをこねる
いつもより丁寧に

まとわりつく脂が
嫌な感じで手にこびりつく


ハンバーグの実像が
気持ち悪さをないものにしてくれる

焼き上がった香ばしい香り
家族の食卓の真ん中に置かれ
空きっ腹を満たす絵が
想像できる

同じ空の向こうで起こっている
市民の恐怖や嘆きや
侵略者と呼び呼ばれた男の考えや
それぞれの守りたいものを

平和や平穏という
望む形に丸めようと思い描く


私の手で出来ることはなく
手にねっとり残る
脂だけがどんどん層を厚くする

今の世界は
誰が作ったハンバーグも
全ての人の欲求を受け入れ
全ての生活を満たすことは
できそうもない

両局にいても
誰もがうまいと言って
食べられるそれを、、、

誰もが喜んで
誰もが譲り合って
食する物を

用意できるのは
一体誰か…
一体何か…
希望は作れるのか…

私は自分の小さな世界に
目を向ける

今夜も
いつもの食卓に
いつもの顔が揃い
日常をいただく

広い世界の中では
無力がぬぐいきれない
ギトギトの脂だらけの
自分の手

それを合わせ
今日をいただく

今のこの目の前のテーブルの上が
私が平和にできる世界なのだから

 

 

 

【20220226】