言の葉の舟 四海を行く

家族と自然と人の心を愛する心筆家のブログ詩集

「ある日の私は」

 

ある日の私は

暮れた空を背負って

その日の全てをドタドタと

玄関口に下ろし

もうそこに

座り込んでしまいたくなる

 

乱雑に置かれた荷物と同じように

言葉もなく

ひんやりとした畳に

倒れ込む

 

 

ある日の私は

少し余裕があって

日暮れと共に落ち着きを取り戻す

 

飛び石脇の小さなライトが

昼間充電した太陽光を

少しずつ分けてくれて

 

飴玉が口の中で溶けた後のような

甘い香りを思い返すように

一日が終わる

 

 

ある日の私は

お帰りなさいの役を放棄し

一番最後に帰りたい気持ちになる

 

少し灯りのついた

人の気配のある 時の場所に

物憂げに甘えの足を鳴らす

 

 

私のただいまの顔は

毎日違う

同じ私なのに

いろんな顔

 

だからどうしたという

収まりのない話だが

一日は いろんな表情を残し

終わっていく

 

だからどうなんだという

意味のない話だが

一生は いろんな風景の中

終わっていく

 

夕刻のことを

あれやこれや思ってみたが

どの日の私も 悪くない

また朝の顔で

ある日を 始めるだけ

 

 

 

【20230711】